(※以下、実在しない架空のアニメのサントラに対する架空のライナーノーツです。真に受けないで!)
音楽をめぐるドタバタコメディとシリアスなSF要素が絶妙に融合した幻のSFアニメ『音響戦艦サクソニア』。そのオリジナルサウンドトラックがついに配信を開始した。全曲音楽生成AI(Riffusion)で作られた異色のサウンドトラックについて、プロデューサーH氏に話を聞いた。
(→『音響戦艦サクソニア』ORIGINAL SOUNDTRACKを聞く)
――早速ですが、まず主題歌についてお伺いします。『進め、サクソニア』はいかにもSFアニメっぽいキャッチーな楽曲ですよね。ちょっと日本語がたどたどしいですけど。
H:そうなんですよ、まずRiffusionに日本語を歌わせるのにとても苦労しました。曲調も、もっと昔のロボットアニメっぽいものをイメージしていたんです。堀江美都子さんが歌っている感じの。でもRiffusionに「日本の昭和のロボットアニメ」とか「特撮ソング」と言っても全然通じなくて……。
――あはは、そりゃ難しそうですね。
H:もっと菊池俊輔先生や渡辺宙明先生のサウンドを学習しろやー!って思いながら生成を繰り返してました。しかもRiffusionは「宇宙に波なんかない」っていうツッコミを理解しない。その( )書きのところはメロディーじゃねぇんだよ!!って。
――かっこ書きにした部分はバックコーラスになるはずなんですよね、確か。
H:はずなんだけどね。そこだけ「rap」とか「talk」と指定してみても、普通に歌っちゃう。だからそこは早々に諦めたけど、サビの「進め、サクソニア」部分がどうしてもしっくりこなくて、10曲以上ボツにしました。だんだん自分でもどれが正解なのか、最初に思い浮かべたイメージがどんなだったのかわかんなくなってくるんですけど。男性ボーカルのものもあったんですよ。
(→『進め、サクソニア~boys ver.~』を聞く)
――え、これ格好いいじゃないですか。日本語も割としっかりしてるし。
H:Riffusion、男性ボーカルの方が日本語得意みたい。でもやっぱり作品の内容的にも主題歌は女性に歌わせたかったんで、このメロディーでそのまま女性ボーカルにRemixしてくれ~とチャレンジしたんですけどね。ダメだった。
――ダメだったんだ(笑)。エンディングの『まどろみの艦(ふね)』はどうですか。勇ましいOPにしっとり寂しい雰囲気のEDっていうのも、昔のロボットアニメを意識してのことなんですか?
H:それはもちろんありますね。ダンバインとかエルガイムとかのOP&EDイメージ。でもEDがあの曲になったのはとにかくCopilotのせい。
――Copilotって、あのMicrosoftの?
H:曲作ってる途中でCopilotに「音響戦艦サクソニアっていうアニメのイメージイラスト描いて」って頼んだら、これ(↓)が出てきて、「あ、そういうアニメなんだ?」ってなって。
――「そういう」って、どういう? サクソニアの形は全然違うけど、乗ってるのサキちゃんですよね?
H:このイラスト見るまで、サキいなかったんですよ。
――えーーーっ。ヒロインなしのアニメだったんですか?
H:いないわけじゃないけど、こういうイメージじゃなかった(笑)。だからこのイラストを見て、「あ、そっちか。じゃあEDはこうだな」って『まどろみの艦』の歌詞ができた。でもこれがまた、全然思うように歌ってもらえなくて、こっちもかなりボツにしました。
――そうだったんですね。僕、あの曲大好きなんですよ。
H:ありがとうございます。もっとトイピアノの音にしたかったんですけどね。それで最後、おもちゃのピアノが壊れる音とか入れたかった。
――不穏なエンディングだなぁ(笑)
H:テレビサイズだとそこは切るから(笑)
――最終回のクライマックスで『まどろみの艦(ふね)~Reprise~』が流れるじゃないですか、あれは泣きました。
H:『Reprise』は奇跡的にうまくInst化できましたね。「LaLaLa」がちゃんと残ってて。あれはRiffusionくんが頑張ってくれた。でも地球に帰る時に流してもらうつもりで作った『俺たちにはまだ、帰れる星がある』には出番がなくなっちゃって。
――あの曲、8話の遺跡のシーンで使われてますよね。このサントラの中でもちょっと毛色の違う荘厳な曲ですが。
H:冒頭の静かな部分は宇宙空間が映る時とか、ちょこちょこ使われてたりしました。後半のコーラスはね、あれ、何歌ってるかわからないんです。
――作詞されたんじゃないんですか?
H:Inst指定で作ったら、Riffusionが勝手にそれっぽいコーラスを入れてくれたんです。昔、『はるかなる光の国へ』っていうコミックのイメージアルバムにラテン語歌唱のすごい荘厳な曲があって、「ああいう感じ」と思ってたから、Riffusionくんやるじゃん、って(笑)
――宙明サウンドはわからないくせに(笑)。
H:ね(笑)。あと「アイキャッチ」もわからないし、「ジングル」でも通じなくて、4分近いやつを平然と作ってくる。
――あー、もしかして『おまえら、いい加減にしろ!』はアイキャッチを作ろうとしたやつですか? あれ、短いですよね。
H:あれが短いのはたまたま(笑)。『次回も見てね』がアイキャッチのなれの果てなんです。『いい加減にしろ!』は明確に、艦内でドタバタしている時用に作った曲ですね。『発進、サクソニア!』は一番最初にできた曲で、主題歌以上に主題歌。Copilotのイラストを見るまでは、この曲のイメージが作品のイメージでした。
――確かにこうしてフルで聞くと歌ものをInstにしたような雰囲気がありますね。あと僕、『踊れ、サクソニア!』が印象に残ってます。2話でダンスバトルする時の。
H:途中に皇帝円舞曲とか盆踊りとか挟まってくるやつね(笑)。1曲の中でディスコからワルツ、マンボ、みたいにしたかったんだけど、Riffusionには理解してもらえなくて。『ウエストサイド・ストーリー』の「マンボ!」をクルーのみんなでやってほしかった(笑)。
――最後になりますが、「サントラ」への想いとか、何かありますか? 参考にした作品とか、好きな作品とか。
H:いや、もうね、子どもの頃からほんとにサントラが大好きで、なけなしのお小遣いで『ブライガー』や『ボトムズ』、『クラッシャージョウ』とかのサントラを買って繰り返し聞いてたんですよ。『イデオン』のサントラも大好きだし、好きな曲を集めて一本のカセットテープにして、自分の小説の「サントラ」にしたりもしてました。さっきもちょっと言及しましたが、当時はコミックや小説の「イメージアルバム」というのもたくさん作られていて、タケカワユキヒデさんが手がけられた『百億の昼と千億の夜』の音楽とか大好きでした。最近だと『蒼き鋼のアルペジオ』のサントラとか『Thunderbolt Fantasy』のサントラが……って、この手の話始めると止まらないですけど、時間大丈夫ですか?
――あー、すいません、今日はどうもありがとうございました。
H:こちらこそありがとうございました。配信で聞けるものも多いんで、名作サントラぜひ聞いてみてください。
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