(※この記事の前段はこちら。映画『MOON CHILD』がただただ好き、という話をしています)



はい、続きというか、『上弦の月』の話です。
映画をはさんでアルバム『MOON』をモチーフとしたライブツアーが二度行われ、1回目が「下弦の月」、2回目が「上弦の月」という呼称になっています。

『上弦の月』にはアルバム『Crescent』からの曲もいくつか入っていて、『Crescent』の曲は『DIABOLOS』ツアーでも歌われています。
『下弦の月』『上弦の月』『DIABOLOS』、そして『LAST MOON』まで、全部『MOON』という物語

で、『上弦の月』は私が初めて参戦したライブでですね。
DVDに収録されている横浜アリーナでのツアーファイナルが2003年7月6日、私が参戦したのはその前日の7月5日。

4月25日に『MOON CHILD』を見るまでGACKTさんのことほとんど知らなかったのに、2か月半後には滋賀から横浜アリーナ行ってるって、あの頃は元気だったなぁ(しみじみ)。

しかも立ち見だったんですよ。
「行きたい」と思った時にはチケットは立ち見しか残ってなかったんだと思う。
入場待ちから延々5時間ぐらい立ちっぱなしだったと思うんだけど……ほんとにあの頃は元気だったな……まだ30代半ばだもんな。

まぁそんなわけで思い入れが強すぎるライブなんですけど、久しぶりにライブDVD見て、まずGACKTさんがめっちゃアクロバットなのにびっくり!
『Lu:na』の間奏のところ、片手側転とか、ダンサーさんの上を宙返りで飛び越すとか、「はぁっ!?」ってことやってる。

ええっと、ミュージシャンですよね?????

今でこそ筋トレ動画でもおなじみで、GACKTさんの歌聞いたことない人でも身体能力がヤバいことは知っている気がするけど、2003年だとまだそんなに筋肉モリモリじゃなく、細身で可愛らしいのにめっちゃアクロバット。

家にトランポリン置いてた頃かなぁ。
ダンスだけでも運動量すごいのに、ほんとにロックミュージシャンのやるこっちゃない(褒めてる)。
夏場にあの衣裳で、アップになるとすんごい汗だくなのがわかる。音楽は体力だよね、リハよりトレーニングの方が長いとかいうのもむべなるかな。

しかもあれだけ踊って飛び跳ねて喉からCD音源。
そうだよ、あの時初めてのライブで、「これ、生で歌ってるの?こんだけ動いてて生で歌えるものなの?????」って思ったんだよ。一部録音なのかなぁ、でもやっぱり生だよね?と。

1か月以上ずーっとライブ映像見てて、ほんとGACKTさん歌うまいなぁ、音程しっかりしてて声も出ててすごいなぁ、って今さらながら感心してる。

すごい(語彙)。

メンバーもみんなすごいしなぁ。演奏するのだって体力いるよねぇ。ある程度踊りというか「振り」あるし、「煽り」もあるし。

そして。

『上弦の月』には映画でGACKTさんの子ども時代を演じた奏多くんも参加しているのだ。とにかく映画が好きでハマった私にはたまらない演出。
『月の詩』、奏多くんも一緒に口ずさんでいるのがわかる。

大人のショウと子どものショウ
大人のショウが歌うのを、最初子どものショウは離れて見守っていて、途中で一緒に肩を組み、寄り添って、そして、大人のショウが倒れ伏すと、子どものショウはそっと労るようにその背に頬を寄せる。

まるで、バカな死に方をする大人のショウを、子どものショウが愛おしむみたいに。

大人のショウの中に、子どものショウはずっと生きていて、どんどん無茶をして、追い詰められていく大人のショウを、子どものショウはただ、見ているしかなくて――。
或いはそれは、死に行くショウの見る夢なのかもしれない。二度と戻れない子どもの自分。変わったつもりはなかったのに、気がつけばずいぶん遠くまで来てしまっていた。

最後の曲、「birdcage」では曲の終わりで大人のショウが子どものショウに変わり、時を告げる12個の鐘の音とともにかき消える。

ここの演出がまた!

舞台には「月」を思わせる丸い照明のセットがあって、そこにはまるで時計の文字盤のように12個のスポットライトが配置されていて、その「月=時計」の中で祈りを捧げるかのように立っていた奏多くんが、最後の鐘の音とともにパっと姿を消すのだ。
鐘が鳴るたび、一つずつスポットライトが消えていって、最後の一つが消えると……。

まぁ、「時を告げる鐘の音」っていうのは私の勝手な解釈なんだけど、『MOON CHILD』を見た後でこの演出を見ると、「時間」っていうのを強烈に感じてしまう。
否応なく時は流れて、誰も子どものままではいられなくて、そこからはずれたら、「怪物」になってしまって。

考えたら、「月」って時間を――年月を測る単位だもんね。太陽で1日、月の満ち欠けで、1か月。寄せては返す波と同じように、月は欠けては満ちて、繰り返す「死」と「再生」

スポットライト、逆に(時計の文字盤だとすると11から順に10,9,8と)消えて行くから、大人のショウが子どものショウになり、祈りとともに時は戻るのかもしれない。
生まれ変わって、もう一度。

そして。
このDVDは「完全版」
こないだの期間限定無料公開ではカットされていた、真の最後の曲。ファイナルの日だけの、特別の「オレンジの太陽」

なんと、孫やイーチェやトシが舞台に出てくるんだよね!
これ見た時、「なんで俺6日に行かなかったんだよぉぉぉ!」ってなったけど、いやー、映像じゃなくご本人達が出てくるって、もう。もう!!!

トシが「俺たちはいつも一緒だよ」とか言って、「ほら、あの曲歌ってくれよ、わかるだろ、ケイが歌ってた」とショウに「オレンジの太陽」を歌うようねだる。
映画の中では、もともとルカが口ずさんでいて、それをケイが歌って、ショウはたぶん歌うシーンなかったと思う。

アルバム『Crescent』にはケイ(HYDE)とのデュエットで収録されているけど、ライブでは孫(リーホン)とのデュエット。リーホンの声が優しくてまたいいのよねぇ。どっちかというとリーホン版の方が好き。

最後、リフレインのところではみんないなくなって、ケイの声だけが流れて、声だけとデュエットするんだけど、誰もいない場所に、その「不在」を強調するかのようにスポットライトが当たって、ショウはそこへ向けて手を伸ばして……。

みんな衣裳も映画のままでねぇ。
みんなで夜の海を見に行った、あの時の姿。
(あ、ショウは最初の銃撃戦の時のジャケットだな)
ケイがいないってことは、昼の海なんだろうか。
でもきっと、たぶん、死の直前にショウが見た夢なんじゃないかな。
だからトシが、「俺たちはいつも一緒だよ」って言うんだ。いなくなったんじゃない、いつもそばにいるって。

トシは死に、孫は敵になり、イーチェは病に倒れショウのことを忘れる。

でも本当は、孫は決してショウの敵になったわけじゃなかったし、ケイにバンパイアとして蘇らせられる直前、ショウはみんなと昼の海を見に行く夢を見ていたのかもしれない。
昼の海に、ケイはまだ来られない――。

はぁ。
妄想がはかどる。

単にHYDEのスケジュールが合わないから来られないってことだったのかもしれないけど、あれはやっぱり「いない」ことに意味があると思うんだ。
「不在」を照らすスポットライト。
いないからこそ、より強く、その存在を想う……。

なんというか、当時も映画とライブ――『MOON』という物語に、「取り戻せない時間」とか「永遠の本当の意味」とか色々感じて、好きな要素しかないって思ったけど、あれから17年経って、またさらに「過ぎた取り戻せない時間」が積み重なって。
あれからもうそんなに時が流れたのかよ、ってホント、ねぇ。

「昔は良かった」という懐古趣味じゃなくて(若くて元気だったらしい自分が羨ましくはあるが)、あんな時間が本当にあった、あれは嘘じゃなかった、子どもの自分もあの頃の自分ももういないけど、でも。

変わっていくものと、変わらないもの。

特典映像にはお誕生日サプライズパーティの様子が入っていて。
GACKTさんの誕生日は7月4日。なので私が参戦した5日には客席からのハッピーバースデーがあったのだけど、6日にはMCのところでメンバーやスタッフからのサプライズがあったんだよね。ケーキとか出て来る。

「絶対何かあるだろうとずっと緊張してたら昨日は何にもなくて、誕生日なのに何もなしかよ、と油断してたら今日かよ!」と完全にノーガードだったらしいGACKTさん、感激のあまり涙をこらえきれず……。

あああああああ、可愛えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!

映像に残してくれてありがとう。ありがとうスタッフ。

この時、2003年は30歳のお誕生日。
2013年、『BEST OF BEST』ツアーの時に40歳のお誕生日で、3年後2023年には50歳のお誕生日が来るわけだけど。
3年後もツアー中だといいなぁ。コロナ禍でライブという形態がどうなるか全然わからないけど、参戦して同じ時空でハッピーバースデーを言いたいものだ……。


一旦スイッチが入るととめどなく暴走を続けるオタク、「もっと!もっとGACKTさんを!!!」ということで、現在テレビ録画を編集したDVDを見るフェーズに入っております。

『MOON CHILD』を見に行くきっかけになった『エンタの神様』初回のGACKTさん、『月の詩』だったような気がしてたけど、『birdcage』だった。
改めてこの曲いいなぁと思っていたところで、季節柄紫陽花を見ては「紫陽花の濡れた葉を~♪」と口ずさんでいたから、なんか感慨深かった。
初めて聴いたGACKTさんの曲、『birdcage』だったんだなぁ。

二度と戻れないあの頃にも ぼくはGACKTさんを聴いていた……。

(歌詞の方は「戻れない」で、この記事のタイトルは「戻らない」にしちゃってたけど、「戻れない」だと主語は「人」で、「戻らない」だと主語は「時間そのもの」だな)