そら:はい、こんにちは、そらです。



うら:うらです。
って何? この大仰なタイトル。「冷静と情熱のあいだ」みたいな。

そら:
うん、私もちょっと盛りすぎかな、という気はしてる。でもタイトルって大事じゃない。タイトルに釣られてうっかり読んでくれる人もいるかもしれないでしょ。
とりあえず今回はファンタジィについて考察したいの。

うら:ファンタジィ?


「ファンタジィ」とはなんぞや?

そら:この前、ひゅうがさんが読んでた小説をちょっと読ませてもらったのね。「これ児童向けファンタジィだからそらちゃんでも読めるよ~」って言われて。
そしたら。

うら:そしたら?

そら:「俺の思ってたファンタジィと違う!」

うら:面白くなかったわけ?

そら:いや、面白いことは面白かったんだけど。

うら:じゃ、いいじゃん。何が問題なの?

そら:妖精とか魔法とかちゃんと出てくるのになんで「俺が思ってたファンタジィと違う!」になったのかな。どうだったら「俺の思ってたファンタジィ」だったんだろう、ってはたと気になっちゃって。

うら:ああ、そう、お疲れさま。結論出たらまた呼んでね。じゃあ俺はこれで。

そら:って! 待って! 一緒に考えてよぉ!

うら:なんで俺が一緒に考えなきゃならんの。そもそもなぜこの手の話題を会話体で進めようと思うかな。

そら:うらちゃんのツッコミがあると考えが深まるのよぉ。一人でああかな、こうかな、って考えるよりずっといいの。
ね? お願い、付き合って♡

うら:(そらが「♡」とか付けてくると怖くてたまんねぇや)
はいはい、わかりました。あれだろ、ファンタジィってのはズバリ――


ハヤカワ文庫FTに入ってるやつだろ!

そら:えっと、それ、間違ってはないけど、ハヤカワ文庫読んだことない人には全然わからない分類じゃ…。

うら:「Hideki Watanabe's SF Home Page」というサイトに「SF文庫データベース」っていうとんでもないページがあって、ハヤカワ文庫FTの目録も533番まで書影付きで掲載されてるぞ。作品名やシリーズ名眺めただけでなんとなく「ファンタジィとは」ってわかるんじゃないか?
『イルスの竪琴』とか『月と太陽の魔道師』とか。
ちなみに創元の方は創元SF文庫じゃなく創元推理文庫の方にファンタジィが入ってるんだよな。

そら:え? え? もしかしてうらちゃんってすごい「ファンタジィ読み」なの!?

うら:全然。
そもそもひゅうがさんの本棚にある本しか読めないし。ぬいぐるみが図書館に行くわけにもいかんからな。『ハリー・ポッター』も読んだことないぞ。

そら:そっか、そうだよね(でもきっと私より読書家…。うらちゃんのこと侮っていたわ)。

うら:まぁあれだな、俺たちぬいぐるみがこんな風に喋ってるのもある種の「ファンタジィ」なわけだが、もしこのblogが「ファンタジィ・エッセイ」とか名乗ったらぜってーバッシングだかんな。
一口にファンタジィっつっても色々あるってこった。

そら:待って、まだまとめないで(笑)。


足りないのは「剣」?

そら:私が「ファンタジィ」と言われてパッとイメージするのは「剣と魔法」「異世界」なのよね。
それで、こないだ読んだお話は確かに現実の地球とは違う、妖精や巨人が存在する「異世界」が舞台で、妖精が「魔法」を使うんだけど、でもなんて言うんだろ。主眼はそこじゃないって言うのかなぁ。
主人公の女の子が寄宿学校で嫌な目にあったり、意地悪な継母にいじめられたり…。そういうこっちの世界でもお馴染みの苦難を持ち前の勇気と知恵で乗り越えていく、みたいな。

うら:つまりヒロインがタイプじゃなかったと。

そら:(うっ、図星かも…)
魔物退治とかー、「世界の破滅の鍵」をどーのこーのとかー、そーゆー血湧き肉躍るアクションがさー、欲しいじゃなーい。女の子が行儀作法習ったりお掃除させられたりするの、全然「ファンタジィ」じゃなくない? もっと日常を飛び出したいんだけど!

うら:気持ちはわかるよ。俺もアクション多めの方が好きだし。でも世の中には「ロマンティック・ファンタジィ」ってジャンルもあってな。必ずしも「剣」は必要ないんだわな。
ちなみに東京創元社のサイトで「ファンタジィ」をクリックするとこんな感じに下位分類が出てくる。


そら:「幻想文学」と「ファンタジィ」はまた違うものなの……。

うら:たとえばひゅうがさんの本棚にあるもので言うと『力の言葉』『水の都の王女』はがっつり異世界ファンタジィ、アーサー王伝説を女性目線で語り直す『アヴァロンの霧』は歴史ロマン、吸血鬼を主人公にした『ミッドナイト・ブルー』やお耽美な妖魔世界を楽しむ『闇の公子』はダーク・ファンタジーってとこかな。
(※リンクはひゅうがさんの別サイトの感想記事に飛ぶぞ)


さらに「空想」と「幻想」は違う…のか?

そら:なるほどぉ、思ったよりずーっと「色々」なのねぇ。やっぱりうらちゃんと考えると勉強になるわ。

うら:そもそも「Fantasy」という言葉を英和辞書で引くと「途方もない空想、怪奇な幻想」なんて書いてあったりする。小説ってのは原則全部フィクション=虚構で「空想」だから、「途方もない」とか「怪奇」ってぇ枕詞をつけることで「現実を舞台にした普通の小説」といわゆるファンタジィを区別してんだろな。
あと、日本では「SF=Science Fiction」のことを「空想科学小説」なんて言ったりするよな。わざわざ「空想」って付ける。

そら:はっ、この記事のタイトル! 「幻想と空想のあいだ」! すごいわ、うらちゃん、驚異的なまとめ力よ!

うら:いや、タイトルおまえさんが考えたんじゃないの? そーゆー話に持って行きたかったんだろ?

そら:ううん、テキトー。

うら:テキトー(棒

そら:それで? 空想科学とファンタジィがどう繋がるの? SFも色々あって、空想科学なのか幻想科学なのかジャンル分けが難しい作品がいっぱいあるってこと?

うら:えーっと、まぁそんな話だけど、例えば『パーンの竜騎士』って作品、これタイトルに竜入ってるしファンタジィかな?って思うとハヤカワ文庫SFに入ってるんだよな。単純なおとぎ話の竜じゃなくて科学的根拠に基づいた世界設定がされてるらしいんだけど、「SFファンタジィ作品」なんて言われたりもしてる。

そら:SFファンタジィ…そーゆーのもあるんだ……。
でも科学的根拠云々って言ったら、ロボットアニメはSFだと思われてるけど設定通りの速度で動いたら乗ってる人間が死ぬとかあるよね。実は空想科学作品じゃなく幻想科学作品?

うら:うーん、「科学的根拠」って難しいよな。タイムマシンなんて昔はホントに「幻想」っぽかったけど、「科学的に実現可能かも」って話になってきたし、「異次元」とか「異世界」っていうのも、今の地球人類の科学では証明できないだけかもしれない。

そら:「妖精」って言っちゃうとファンタジィだけど、人間とはサイズの違う知的生命体、しかも羽根付き、っていうのが実在する星が宇宙のどこかにはあるかもしれないものね。

うら:さらにそいつが人類にはまったく理解不能な科学技術によってカボチャを馬車に変えたら……。

そら:人類にとっては「魔法」!

うら:この世界が「神様(あるいは妖精王とか何でもいいけど)のシミュレーション」だと書けばファンタジィ、コンピュータシミュレーションならSF、みたいな。

そら:「世界の破滅の鍵」が核兵器のスイッチならSF、“バルス!”ならファンタジィ!

うら:いや、世界の破滅の鍵が核兵器のスイッチっていうのはむしろリアル小説かも……。

そら:そっか……。

うら:俺たちぬいぐるみが喋ってるのはファンタジィだけど、実はAIが実装されてて云々だとSFだ。

そら:そこはファンタジィの方がいいなぁ。魔法でぬいぐるみにされてるけどホントは動物王国のお姫様とか。
ひゅうがさんのお供をして冒険の旅に出て、途中で本物の虎に変身して魔物を倒すなんてどう!?

うら:あくまで戦いたいんだな。さすが虎……。


(この蜂さんにはAIが仕込まれていて…)